歯根端切除術について

口腔外科は、「歯を抜く」、「切り取る」といったイメージの強い分野です。イメージ通りの部分もありますが、あらい歯科・口腔外科クリニックでは歯を残すための外科処置にも力を入れています。

 根の治療をしたけど症状が取れない時、抜歯と説明されることがあります。でもなるべく自分の歯を残したい・・・そのような場合には「歯根端切除術」や「意図的再植術」によって抜歯を回避できることがあります。どちらも保険診療で行える治療です。今回の記事では歯根端切除術についてお知らせします。

 歯根端切除術は、根の先を切り取って病変部をきれいにする方法です。1884年に発表されたもので、長い歴史があります。従来法では50%ほどの成功率でしたが、1997年に新しい方法(マイクロエンドサージェリー)が発表され、成功率は90%まで引き上げられました。2014年にはマイクロエンドサージェリーが日本の保険診療にも認められました。

 マイクロエンドサージェリーでは、図1のように、より確実に病変を除去し、病巣を封鎖するように工夫がされています。手術用顕微鏡を使うことで、これまでよく見えずに感覚的に行っていたところを目で確認しながら進めることができます。図2では、同じ歯の根尖部をミラーで見ています。肉眼では分からない汚染物の残存や亀裂などの異常を、20倍視野では見つけやすくなります。また超音波発振器で垂直方向に逆根充窩洞形成を行うことにより、歯根の解剖を考慮した理想的な封鎖が可能となります。

図1
図2

 歯根端切除術では、術前の画像評価も大変重要です。どこまで病変が広がっているか、隣接する組織との位置関係がどうなっているかは、単純X線検査だけでは分からないことがしばしばあります。そのため歯科用CTを撮影し、本当に歯根端切除術が適応なのか、術中にはどこに気を付けるべきなのかを検討する必要があります。図3のように、単純X線では分かりにくい病変も、CT撮影すると意外と広がっていたということがあります。

図3

 保険診療が認めているマイクロエンドサージェリーでは、これまで述べてきたように歯科用CTでの評価と手術用顕微鏡下での処置が必要です。それぞれの機器の普及率は、歯科用CTが2018年までで20%程度、手術用顕微鏡が2021年までで10%程度といわれています。当院では開院時からどちらも導入しており、より高度で確実な医療の提供を目指しております。

 根の治療で症状が取れなくても、まだご自身の歯を健全に残せる可能性があります。まずはお気軽にご相談ください。